薬剤師を目指しているけど、具体的にどんな仕事をしているのかイメージできない
同じ医療従事者でも、医師や看護師のように患者さんが直接仕事中の様子を目にする機会が少ないので、イメージしにくい部分は多いですね。
薬剤師の仕事内容を誰にでもわかりやすく解説しました。
薬剤師の仕事内容をわかりやすく解説!
薬剤師というと、存在はもちろん知っているしお世話になったことはあるけれど、具体的にどのような仕事をしているのかはよく知らないという方が少なくありません。
薬剤師は裏方としての仕事が多く、医療従事者ではない人からするとどのようなことをする仕事なのかイマイチイメージしにくい職業でもあります。
本記事では、薬剤師という職業について、改めて基本からご紹介していきます。
これから薬剤師を目指す方や薬剤師の資格取得見込みの方も、改めて仕事内容について確認しておくことで「こんなはずじゃなかった」というギャップを防げます。
まずは薬剤師の一般的な仕事内容からご説明致します。
患者側からすると、医師が作成した処方箋通りに薬を選んでいるだけに見えるかもしれませんが、実際はそう単純なものではありません。
処方監査・疑義紹介
患者から処方箋を受け取ったら、まずはその内容に誤りがないかを確認します。
医師といえども人間なので、当然間違えることもあります。
そのため、患者に薬を提供する前の最後の砦として、薬剤師が処方箋を改めて確認するのです。
この作業を「処方監査」と呼びます。
処方監査の結果、間違いかもしれない点や疑問点があった場合は、すぐに処方箋を作成した医師に問い合わせます。
この作業を「疑義照会」と呼び、疑義照会をして疑問が解消され、薬剤師が納得するまで患者に薬を渡してはいけないことになっています。
調剤・調剤監査
処方箋の内容を確認できたら、処方箋の通りに薬を用意します。
薬剤師は薬のプロですが、医師の許可なく薬を変更することはできませんし、正式な処方箋には応じる義務があります。
処方箋通りの薬を提供する業務を「調剤」と呼びます。
調剤後は、内容が適切かどうか改めて確認します。これを「調剤監査」と呼びます。
服薬指導
薬を渡して「ハイ、終わり」ではなく、薬についての服薬指導を行うのも薬剤師の仕事です。
患者本人や看護師、介護士、保護者等の周りの人に対して、処方した薬の効能や服薬方法、注意点等を指導します。
また必要に応じて、薬の服薬状況(正しく薬を飲めているか、困っていることはないか、残薬はないか)の確認も行います。
薬歴管理
患者の薬歴管理も薬剤師の仕事です。
薬歴の内容には、患者の基礎情報や服薬状況、処方箋、調剤の内容、疾患に関する情報、服薬指導の要点、疑義照会の内容及び結果、担当薬剤師の氏名などがあります。
薬歴は調剤診療報酬(薬剤師の報酬)の根拠にもなる貴重な情報のため、患者それぞれの情報を正確に一定期間保存する義務があります。
医薬品の管理
薬剤師は、薬局で保持している薬の在庫を適切に管理します。
薬によって品質に影響を与えない適切な保存方法が決められている為、それに従って薬を管理しています。
また、薬の不正な使用や持ち出しがないか調べる為に使用した数量と残りの数量が合っているかも確認する必要があります。
特に医療用麻薬や向精神薬、覚醒剤の原料、毒薬、劇物等に関しては、薬物濫用や防犯の観点から特に厳重に管理されます。
医薬品の販売
薬の中には処方箋がないと提供できない「医療用医薬品」とは異なり、処方箋なしでも提供できる市販薬(OTC医薬品)があります。
しかし、市販薬の中でも要指導医薬品や第一類医薬品に分類される医薬品は、薬局やドラッグストアで販売する場合でも薬剤師が不在の場合は販売できないことになっている為、そういった薬品の販売も薬剤師の仕事となります。
薬剤師の仕事内容を職場別にわかりやすく解説!
一般的な薬剤師の業務をご紹介しましたが、薬剤師の仕事内容は職場によって異なっています。
職場別の薬剤師の仕事内容を、ここからご紹介します。
調剤薬局
調剤薬局に勤める薬剤師の仕事内容は、先ほどご紹介した内容とほぼ同様になります。
医師が作成した処方箋を元に、患者に薬を提供する業務がメインです。
病院・診療所
病院や診療所で勤務している薬剤師の仕事内容は、調剤薬局と共通する部分が大きいです。
病院独自の、より専門的な薬剤師の仕事内容としては、まず新薬開発の際の臨床検査を行うことがあります。
他にも、患者それぞれに対する適切な薬の投与量を決定するために、患者の血液中の薬の濃度を測定する薬物治療モニタリング(TDM)や、薬の効果や副作用による食欲不振に対してその改善の為の助言を行い、栄養剤等を処方し本人、家族に説明、指導を行う栄養サポートチーム(NST)等の業務を行うこともあります。
製薬会社
企業で働く薬剤師の業務内容は多岐にわたります。
新薬の研究や臨床検査を行う事もありますし、医薬品専門の営業職として病院等の医療機関に自社の製品を売り込んだり、医薬品に関する情報提供を行うこともあります。
他にも自社製品の安全性管理に特化して情報を集める職種もあれば、営業職向けにより専門的な内容をレクチャーする職種もあります。
製薬会社の場合は役職によって仕事内容が大きく異なることもあるので、それも含めて考えると更に多くの業務があります。
卸売販売会社
卸売販売会社は、病院や薬局・ドラッグストアに医薬品を販売する会社です。
卸売販売会社に勤める薬剤師の仕事は管理業務がメインになります。
一般的な病院や薬局よりも遙かに膨大な量の医薬品を保持しておくことになるので、その管理業務は業務の大きな比重を占めます。
他にも、自社が販売する医薬品について、購入者に専門的な情報を提供する業務も担います。
行政
国や県庁、保健所に勤める薬剤師が行政の薬剤師です。
仕事内容としては、「薬事監視員」としての仕事となり、医薬品の表示、保管、適正使用についての調査、指導、監視を行います。
他に衛生研究所などの公立研究所で働く場合もあり、そこでは試験検査や医薬品の研究を行います。
更に特殊ではありますが、麻薬取締官や自衛隊薬務官も行政の薬剤師に含まれます。
学校の薬剤師
調剤薬局や病院で働いている薬剤師が教育委員会等からの依頼を受けて学校で勤務する場合があります。
学校では学校医や学校歯科医、養護教員らと協力しながら学校保健にあたり、水道やプールの水質検査、教室の空気、湿度、照度、騒音などの環境検査や衛生検査を定期的に行います。
また、学校の生徒に対して、薬の正しい使い方やタバコやアルコールの害、薬物濫用防止等の講義を行うこともあります。
災害時の薬剤師
災害時には、薬剤師は救護所や避難所での医療チームの一員として医療活動に参加します。
薬に関する助言や指導を通して、人々の健康と安全に貢献します。
そもそも薬剤師とは
ここまで薬剤師の仕事内容について紹介してきましたが、そもそも「薬剤師」という言葉にはどのような意味があるのか、薬剤師の定義はなんなのかという方もいらっしゃるかと思います。
知っているようで意外と知らなかったりするので、念のため確認しておくことをおすすめいたします。
薬剤師は、薬剤師法と呼ばれる法律によって、以下のように定義されています。
薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。
引用元:薬剤師法(昭和三十五年法律第百四十六号)
つまり「薬に関する知識と技術を活用して、人々の健康に貢献する存在」であると表現することができます。
代表的な業務としては薬局や病院での調剤、服薬指導ですが、職場によって様々な役割を担っていることはここまでご紹介してきた通りです。
しかしそのいずれにおいても、薬に関する専門的な知識と技術が必要な点は共通しています。
2020年に行われた国勢調査によると、日本全体で薬剤師の人数は32,1982人で、38.6%が男性、61.4%が女性となっています。
薬剤師になるには
では、そんな薬剤師になる為には何が必要になるのでしょうか。
何となく「薬学部を卒業する必要がある」ということは多くの人が知っていそうですが、実は薬剤師になるために必要な条件は学歴だけではないのです。
薬剤師免許を取得する必要がある
まず薬剤師になる為には、薬剤師免許を取得する必要があることまではご存知の方も多いですね。
薬学部の卒業生は薬剤師の国家試験を受験し、それに合格する必要があるのです。
薬学部さえ卒業していれば受験資格があるのかというとそうではなく、薬学部の中でも「6年制」の薬学部を卒業していないと薬剤師国家試験の受験資格は得られません。
薬学部には4年制と6年制があり、6年制の卒業生は主に薬剤師となり臨床(現場)での活躍を目指すのに対して、4年制の卒業生は基本的に研究者を目指します。
薬学部の卒業生は薬剤師として臨床で活躍するだけではなく、研究者として活躍する道もあるという考え方から、薬剤師免許を取得できない4年制の薬学部も存在しているのです。
薬剤師国家試験について
薬剤師国家試験は年に1度、2月に実施されます。
問題数は全345問で、合格基準は全体の平均から導き出される相対的な基準となっています。
またその相対的な基準を上回り、且つ必須問題の正答率が70%以上、各科目の正答率が30%以上、禁忌問題の選択数が2問以下、という基準を満たしている必要があります。
ちなみに相対的な基準とはいうものの、過去数年そのラインは正答率63%前後でほぼ一定となっています。受験生は、おおよそこのラインを目指すことになります。
薬剤師国家試験の合格率
薬剤師国家試験の合格率は数年前まで70%程度でしたが最近は緩やかな下降傾向にあり、直近3年間は70%を下回っています。
6年間薬学部で勉強してきた学生でも10人中3人以上は落ちる、厳しい試験だということがわかります。
薬剤師の働き方
仕事内容は何となく分かって貰えたかと思いますが、より具体的なイメージを固める為に、より細かい点まで解説していきます。
薬剤師の仕事着
まずは薬剤師の仕事着からです。
普通の仕事であればスーツか、お店の制服、作業服などイメージできるかと思いますが、薬剤師はどのような服装で働いているのでしょうか。
白衣
白衣はイメージ通りかもしれません。
薬剤師であることが一目で分かるという利点があるため、薬局やドラッグストアで働いている薬剤師の方は白衣を着ている方が多いように思います。
また白衣は汚れがすぐにわかりますし、薬品から身を守る役目も果たしてくれるので、薬剤師の服装としてはメリットが多い服装でもあります。
スクラブ
最近では動きやすさ等のメリットから、スクラブを着用している薬剤師の方も見かけます。
スクラブとは主に医療従事者が着るVネックの半袖シャツのことで、非常に丈夫な生地でできているので耐久性があり、しっかりと洗いやすい、というメリットがあります。
病院のようなある程度大規模な職場で導入されているイメージがあります。
足下はスニーカーか革靴
足下は動きやすさを重視するため、スニーカーか革靴を履いている方が多いです。
薬剤師は立って働くことも多いですし、職場で転ぶと危険なため、クッション性があり疲れにくく且つ靴底が滑りにくいものが重宝されます。
薬剤師の仕事道具
次は薬剤師の仕事道具についてです。薬剤師は普段の仕事で何を使っているのでしょうか。
個人で用意する仕事道具
個人で用意するものは、一般的な道具で言うと下記があります。これは薬剤師に限らず多くの仕事で使用しますね。
- メモ帳
- ボールペン
- 電卓
薬剤師特有のものだと、下記のような道具を持って仕事に臨みます。
- 医療用ハサミ
- 調剤印
- 薬学事典
医療用ハサミは、刃先にガードがついており刃にテープがつきにくくなっています。
調剤印は処方箋に日付と名前を押印するために使い、薬についての基本的な情報を網羅した薬学事典は確認のために使います。
職場で用意されている道具
職場で用意される専門的な道具は下記の通りです。
- 薬を袋詰めしてくれる分包器
- 錠剤を半分に割る錠剤半錠器
- 薬剤の計量に用いる非常に正確なはかり
- 粉薬を容器から一定量取り出すための薬匙(やくし)
- 粉薬を混ぜる乳鉢、乳棒
- 液体を測るメートルグラス
- 薬についてより専門的な内容を記した薬価本
薬剤師の1日のスケジュール
職場にもよりますが、薬剤師の仕事は薬局や病院が始まる8時頃から始まり夕方18時ごろに終わることが多いです。
朝礼の後、昼休憩まで業務に当たり、その後また薬局や病院が終わる18時頃まで業務にあたります。
薬局であればほとんどの時間を調剤業務を行いますが、病院だと患者の治療方針の話し合いに参加したり、服薬指導のために病棟を回ったりします。
ドラッグストアならシフト制で深夜までの勤務になることもあり、レジ打ちや接客などの業務も行います。
薬剤師の休日
薬剤師の仕事は変則週休2日であることが多いです。
平日午後+土曜日の午後+日祝が休みという職場は多いですね。
特に門前薬局は病院の休診日に合わせて休日を設定している傾向があります。
ドラッグストアは土日や深夜も営業していることが多いので基本はシフト制です。
薬剤師は確実に土日に固定で休みがとれるわけではないのです。
薬剤師の給料について
給料が高いイメージのある薬剤師ですが、実態はどうなのか具体的なデータを見ていきます。
全国平均
正社員として働く薬剤師の2022年全国平均年収は580.5万円です。
2022年公開の政府統計(2021年度調査)によると、薬剤師の平均年収は580.5万円と分かりました。前年度の全国平均年収と比べると、15.4万円のアップとなりました。
引用元:マイナビ薬剤師
日本人の平均賃金が450万円程度なので、比較的高い給料を貰える仕事だと言えます。
エリア別
エリア別で見ると、四国や甲信越、東北辺りの地域は薬剤師の給料が高い傾向があります。
反対に首都圏や近畿、北陸は若干低めとなっています。
これは、働いている薬剤師の人数が異なっていることが原因だと考えられます。
有名な大学があったりすると、そこを卒業してそのまま薬剤師として働く人口が多くなりますが、逆に有名な大学がない地域は薬剤師の人数が不足しがちになります。
その為、そのような地域では比較的高い給料で薬剤師を雇っているのです。
職場別
職場で言うと、製薬会社等の企業に勤める薬剤師は平均年収が最も高く、次いで高いのがドラッグストアとなります。
調剤薬局と病院はほぼ同じ水準です。
職場の規模や役職によって幅がありますが、企業の薬剤師の年収は600〜1200万円、ドラッグストアだと500〜800万円、薬局や病院だと400〜600万円が多いです。
高年収を狙う場合は企業への就職を目指すのが得策です。
薬剤師の将来性について
日本は少子高齢化が進んでおり、医療従事者である薬剤師は今後も需要があり続ける職種です。
しかし国を挙げて医療人材の確保に取り組んでいるおかげで薬剤師の人数は微増傾向にありますし、院外の薬局で調剤を受けた割合である「医療分業率」も70%を超えているので、活躍の幅を広げる余地は小さくなっています。
そのような背景がある日本で、今後とも長くに渡って薬剤師として活躍するには、単に処方箋通りの薬品を正確に調剤できる機械のような人材ではなく、コミュニケーション力と専門性を高いレベルで兼ね備え、患者の求める情報を適切に提供できる人材を目指していく必要があるでしょう。
まとめ
本記事を最後まで読んで頂きありがとうございました。
薬剤師は自分が磨いてきた知識やスキルのような専門性で多くの人々を助けることができる、やりがいに溢れた唯一無二の職種です。
興味を持たれた方は、是非他にも色々な情報を調べてみてください。
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