かかりつけ薬剤師制度をなかなか利用してもらえない。
そもそもかかりつけ薬剤師制度を知っている患者さんが少ないし、わざわざ選ぶ必要性も感じないのでは?と思う。
かかりつけ薬剤師制度は2016年から始まったばかりで、まだあまり認知されていないのが現状ですね。
しかし今後はかかりつけ薬剤師の必要性が高くなり、将来性も十分にあると見込んでいます。
かかりつけ薬剤師がいらないと言われる理由
「かかりつけ薬剤師」制度が始まってから約6年が経ちました。
名前は聞くけれど、来局患者の数に対してかかりつけ薬剤師を選ぶ人はそこまで多くない印象があります。
実際、薬局の利用に関する世論調査の公表についてという資料では、かかりつけ薬剤師・薬局の利用は7.6%にとどまっているというアンケート結果が出ています。
同調査では「診療所の近くにある薬局に行くのが都合が良い」という解答が7割を占めており、かかりつけ薬剤師の利点を説明をしても、かかりつけ薬剤師やかかりつけ薬局を利用しようとは思わないという回答が4割を占めています。
具体的にかかりつけ薬剤師がいらないと言われてしまう理由を見てみましょう。
サービスに費用がかかる
かかりつけ薬剤師を持つ場合、今までより少し多く費用を負担することになります。
ただし健康保険での負担になるので、実際に増えるのは、約50円〜100円(3割負担の方)の負担です。
薬剤師であれば誰でも選べるというわけではない
かかりつけ薬剤師制度は好きな薬剤師を選んでかかりつけにできますが、薬剤師であれば誰でも良いわけではありません。
いつも丁寧なあの人が良いと言ってもダメな場合もあります。
かかりつけ薬剤師となるには薬局・薬剤師側に条件があります。
薬剤師として一定以上の知識や経験が必要で、国に届出を行わなければなりません。
また、薬局にもプライバシーのためのパーテーション設置などの施設基準があります。
そのため薬局によっては、かかりつけ薬剤師が在籍していない場合や、かかりつけ薬剤師の届出を行っていないこともあります。
充分な経験等がある薬剤師とは?
薬剤師として薬局での勤務経験が3年以上
引用元:公益社団法人 日本薬剤師会
その薬局に週32時間以上勤め、かつ1年以上在籍している
医療に関する地域活動に参画している
薬剤師研修認定等を取得している
かかりつけ薬剤師は一人しか選ぶことができない
かかりつけ薬剤師制度は患者1人に対して1人の薬剤師が担当します。
よってかかりつけ薬剤師を1人決めると、他の薬局でも別のかかりつけ薬剤師がほしいと言っても制度上不可能です。
かかりつけ薬剤師がいる場合、すべての処方された薬はかかりつけ薬剤師のいる薬局でもらい、薬の一元管理を図る目的もあります。
ただ下記のような事情がある場合、次の月からかかりつけ薬剤師を変更することが可能です。
- 複数の薬局を利用していて、現在かかりつけ薬剤師がいる薬局とは別の薬局の薬剤師の方が良いと感じた。
- 現在の担当薬剤師と同じ薬局に勤務している別の薬剤師がかかりつけになれるようになった。
患者さんの意思が尊重されるので、気分が変わればかかりつけ薬剤師の利用をやめることもできます。
そもそもかかりつけ薬剤師とは
かかりつけ薬剤師は2016年に開始したまだ新しい制度のため、そもそもかかりつけ薬剤師とはなんなのか薬剤師自身もよくわかっていないということは少なくないのではないでしょうか。
普通の薬剤師と何が違うのか、解説していきます。
かかりつけ薬剤師制度は2016年から始まった
以前から複数の医療機関から多数の薬をもらって服用している患者が増え、ポリファーマシーや残薬、医療費の高騰が問題となっていました。
薬による治療の安全性と有効性を高め、不要な薬による医療費を削減するため、薬局薬剤師が専門性を発揮し、患者の安全を守ることを目的に2016年に「かかりつけ薬剤師」が制度化されました。
かかりつけ薬剤師の業務内容
かかりつけ薬剤師のサービス内容は大きく分けて3つです。
薬の専門家が安全・安心に薬を使用できるように指導する
薬を安全・安心に使用していただくため、処方薬や市販薬など、あなたが使用している薬の情報を一カ所でまとめて把握し、薬の重複や飲み合わせのほか、薬が効いているか、副作用がないかなどを継続的に確認します。
引用元:公益社団法人 日本薬剤師会
複数のお薬手帳をお持ちの方には、1冊に集約していただくよう、提案します。
薬局が開いていない時間にも薬の相談ができる、在宅医療のサポート
休日や夜間など薬局の開局時間外も、電話で薬の使い方や副作用等、お薬に関する相談に応じています。また、必要に応じて夜間や休日も、処方せんに基づいてお薬をお渡しします。
引用元:公益社団法人 日本薬剤師会
外出が難しい高齢者などの患者さんのお家に伺い、お薬のご説明をしたり、残薬(手元に残っている薬)の確認も行います。
医療チームのサポート
処方内容を確認し、必要に応じて医師への問い合わせや提案を行います。
引用元:公益社団法人 日本薬剤師会
患者さんに薬を渡した後も患者さんの状態を見守り、その様子を処方医にフィードバックしたり、残薬の確認を行います。
お薬だけでなく、広く健康に関する相談にも応じ、場合によっては医療機関への受診もお勧めすることもあります。
また、地域の医療機関とも連携し、チームで患者さんを支えられる関係を日ごろからつくっています。
かかりつけ薬剤師は利用者とどんな点で関わるのか
かかりつけ薬剤師は患者とどのような点で関わるのか、具体的に解説していきます。
薬局の営業時間以外にも相談を受けることも
前述の通り、かかりつけ薬剤師は薬局の営業時間外に薬の相談を受けることがあります。
例えば、夜間急に胃が痛くなり救急外来を受診して、大きな問題はなかったけれど痛みを抑えるため薬が処方されたとします。
その場合、夜間・時間外でもかかりつけ薬剤師は対応することになります。
たとえば急いで受診したためお薬手帳を忘れてしまい、医師には大まかな薬の説明しかできなかった場合など、かかりつけ薬剤師が薬を管理していれば他の薬との飲み合わせをチェックし安全に処方薬を使用することができます。
処方箋以外にも市販の薬や健康食品についてもアドバイスをする
処方薬と同じ成分・似た成分を含む市販薬があるので「この処方薬を飲んでいる時はこの市販薬は飲まないように」といった指導が必要な場合、薬剤師がチェックして患者にアドバイスをします。
薬だけでなく健康食品、普通の食品にも薬の効果を強くしたり、弱めたりするものがあるのでそれらの指導も必要です。
利用者の家に余っている薬の管理をする
患者の手元に余っている薬を管理することもかかりつけ薬剤師の重要な役目です。
期限などをチェックし品質に問題がないと判断すれば、余った薬から使用するように医師に相談したり、今後の飲み忘れを防ぐために薬をひとまとめにして飲みやすくする(一包化)提案を行ったりします。
全く飲んでいない薬が大量に余っている場合には、その旨を医師に報告し場合によってはその薬は中止してみてはどうかと提案することもあります。
かかりつけ薬剤師に将来性はある理由
必要性をあまり感じられないと言われているかかりつけ薬剤師ですが、将来性はあると見込まれています。
その理由を解説します。
今後薬剤師の仕事は対物業務から対人業務へ変化していく
薬物療法の安全性・有効性の向上やそれに伴う医療費の効率化といった医薬分業の意義は大きく、医薬分業率は上昇してきました。
しかしその一方で、下記のような問題も指摘されていました。
・医療機関の周りにいわゆる門前薬局が乱立し、患者の服薬情報の一元的な把握などの機能が必ずしも発揮できていないなど、患者本位の医薬分業になっていない。
引用元:患者のための薬局ビジョン~「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へ~
・医薬分業を推進するため、患者の負担が大きくなっている一方で、負担の増加に見合うサービスの向上や分業の効果などを実感できていない。
厚生労働省は、今後は薬剤師・薬局の業務が対物業務から対人業務へシフトしていくことを明確にしています。
対物業務は人間でなくてもできる
厚生労働省が公表した「調剤業務のあり方について(2019年4月)」において、ピッキングなどの一部の思考・技術を必要としない業務は薬剤師の目が届く範囲で薬剤師以外のスタッフも担うことができると示されました。
薬剤師以外のスタッフが行った業務の最終責任者は薬剤師です。
またピッキングについては、近年人工知能(AI)やロボット技術の向上により自動ピッキングマシンが作成・導入されており、自動化できるものは自動化するという傾向も進んでいます。
機械の導入にはお金もかかるのでまだ一部の薬局でしか導入が進んでおらず、機械への補充などを考えると規模の小さな企業ではいまだに人が重宝されている現実があります。
しかしAIで代替されるのは時間の問題でしょう。
自動化できる時間は自動化し、余った時間をコミュニケーションに使うことで患者をよりよく知ることができ、お互いの信頼関係が深まりさらなる薬物療法の効果が得られる可能性が高くなると考えられます。
まとめ
かかりつけ薬剤師がいらないと言われてしまう理由は
- そもそも医薬分業における薬局の機能に利用者が疑問を呈している状態で、さらに負担が増す。
- 誰でもかかりつけ薬剤師として選べるわけでなはい。
- システムが面倒。またはよくわからない。
といった部分が大きいと思われます。
かかりつけ薬剤師がやっている業務は、かかりつけにならなくても薬剤師が患者全員に行う業務です。
「費用を多くもらっているからする業務」でなはく「薬剤師ならばしなくてはならない業務」なのです。
理想はすべてに同じ程度の本来薬剤師が行う業務をすることですが、現実的には毎日数十人~数百人来る患者に出来る仕事には限度があり、さらに患者側が「余計なことはするな」と言ってくる場合があります。
そういった患者には必要最小限の安全性を確保する業務に収束してしまい、快適性を上げるための提案が出来なかったりもします。
このような部分を見ても一部は「させられて薬局を利用している」と言った感じであり、今現在の薬剤師への信用は非常に高いとはいえず、今後も信用や満足度を上げる努力が必要なことがうかがえます。
その一方で、かかりつけ薬剤師を選ぶ患者は説明を受け同意の上で選ぶので、むしろ薬剤師側から提案することで喜ばれることが多々あります。
今後薬剤師は薬局の中で調剤をするだけではなく、医療チームの一員として治療に参加し、地域住民や患者からより信用を得る存在になることが期待されます。
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