救急認定薬剤師のやりがいを解説!
薬剤師に「認定薬剤師」の制度があることは、薬剤師であればご存じですよね。
既に認定薬剤師であるという人や、今目指して頑張ってらっしゃる方もいるかもしれません。
認定薬剤師制度には何種類かありますが、ここでは「救急認定薬剤師」についてご説明します。
「救急認定薬剤師」とは、薬剤師の中でもまだあまり知られていない認定制度ではないでしょうか。
どのような認定資格なのか、また、この救急認定薬剤師の仕事の「やりがい」とはどのようなものなのか、見ていきましょう。
そもそも救急認定薬剤師とは
そもそも「救急認定薬剤師」とは、日本臨床救急医学会が平成23年に始めた認定制度です。
「救急医療における薬物療法に関する高度な知識、技術、倫理観を備えた認定薬剤師を養成し、最適な医療を提供すること、国民の健康に貢献することを目的とする」とされています。
救急医療の現場では重症度や緊急性の高い患者も多く、高度な処置が必要となることも多いです。
そのような救急医療において、より良い医療を提供すべく、薬剤師としての職能を生かそう!ということですね。
救急認定薬剤師の役割を解説
では、「救急認定薬剤師」には具体的にどのような役割が求められるのでしょうか。
仕事の内容や関わる状況についてご紹介します。
救急認定薬剤師が携わる仕事の範囲
「救急認定薬剤師」が携わる仕事にはさまざまなものがあります。
- 薬剤の選択・提案
- 点滴速度管理
- 副作用のモニタリング
- 治療薬物モニタリング(TDM)
- 麻薬などの管理
- 持参薬の管理
これらは病院薬剤師として日常的に行う業務かもしれません。
しかし、救急では、より複雑なケース・重症度や緊急性の高いケースが多くなり、薬剤師に求められる知識もより高いものとなります。
また、救急の現場では、救急車で搬送されてきた患者のベッドへの移乗、点滴交換のサポート、輸液ポンプの設定など看護師の業務をサポートをすることも多いようです。
また、大きな災害があった場合、被災地で活動をすることもあるとのこと。
物資が不足しがちな被災地で適切な治療をするのに代替薬を提案したり、衛生環境がよくない場所の感染予防の対策をしたり、薬剤師にできる仕事は様々あります。
より高度な薬剤知識・経験をもつ「救急認定薬剤師」が携わる仕事の範囲は大きいといえます。
救急認定薬剤師が関わる傷病
救急に運ばれてくる患者様にはさまざまな傷病の方がいます。
その全般が「救急認定薬剤師」の関わるべき患者・傷病ですが、中でもこのような傷病は特に薬剤師の知識・能力が生かせるのではないでしょうか。
- 急性中毒(薬物・化学物質・アルコールなど)
原因物質の特定、解毒方法の提案に薬剤師として関わることができるでしょう。
- 臓器不全
腎臓・肝臓などの臓器にダメージがある場合、薬物動態が不安定となるでしょう。
それに対応する投与量・投与経路の設計は薬剤師の業務でしょう。
- 循環器系疾患
心電図を読み、治療に必要な薬剤を想定し準備することが出来そうです。
救急の現場で対応できる薬剤師になるには、薬剤だけでなく、傷病についても多くの知識が必要と言えるでしょう。
救急認定薬剤師が働く場所
「救急認定薬剤師」の働く場所は、救命救急センターや集中治療室(ICU)のケースが多いようです。
救命救急センターでは、搬送されてくる患者様の状態に応じて、的確な対応が求められます。
集中治療室(ICU)では、術後の栄養管理や感染管理などにも能力を発揮することが必要です。
また、大きな災害が起こった時には被災地でも働くケースもあります。
いずれも、仕事に対してスピード感と正確さが求められ、薬剤師として豊富な知識が必要な難しい職場で、広い範囲で「救急認定薬剤師」の仕事が求められています。
救急認定薬剤師の資格の取得方法
では、「救急認定薬剤師」の認定資格はどのように取得するのでしょうか。
一部、日本臨床救急医学会の救急認定薬剤師制度規則より抜粋して紹介します。
認定の条件
「救急認定薬剤師」に認定されるには、日本臨床救急医学会に申請することが必要です。
申請するための条件がこちらです。
- 本邦における薬剤師免許を有し、薬剤師として優れた人格及び救急医療における薬物療法に関する見識を備えていること。
- 申請時において、薬剤師としての病院・診療所勤務歴を5年以上有し、そのうち2年以上救急医療に従事していること。
- 申請時において、本学会の正会員であり会員歴が2年以上あり、かつ会費を完納して いること。
- 日本医療薬学会認定薬剤師、薬剤師認定制度認証機構により認証された認定薬剤師、あるいは日本臨床薬理学会認定薬剤師の資格を有していること。
- 医療機関において、救急医療に関する業務を通じて患者の治療に自ら参加した25例以上の症例を報告できること。
- 認定薬剤師認定委員会が指定し、理事会の承認を得た学術集会、研究発表などにおいて、細則に定める単位数を履修していること。
- 認定薬剤師認定委員会が開催する講習会を受講していること。
- 日本臨床救急医学会評議員または所属施設長の推薦があること。
これらの条件を満たし申請した上で受験資格が認められれば、「救急認定薬剤師」認定試験を受験することができます。
認定試験に合格すれば、晴れて「救急認定薬剤師」となります。
更新について
「救急認定薬剤師」の認定資格には更新制度があります。
制度の内容はこちらです。
- 救急認定薬剤師の資格は、5年毎に更新する。更新審査は、毎年1回行う。
- 救急認定薬剤師の資格を更新しようとする者は、認定を受けてから更新までの間に認定薬剤師認定委員会の指定する学術集会、研究発表などにより、細則に定める所定の単位を取得しなければならない。
- 救急認定薬剤師の資格を更新しようとする者は、認定を受けてから更新までの間に認定薬剤師認定委員会が開催する講習会を細則に定める回数受講しなければならない。
つまり、5年更新制であり、その間も学会の参加、講習会の受講など自己研鑽が必要ですが、「更新試験」というものはありません。
申請や認定にかかる費用
「救急認定薬剤師」の認定申請手数料は次の通りです。
- 認定手数料 10,000 円
- 更新手数料 10,000 円
また、認定証の交付を受けるためには、新規認定者 20,000 円、更新認定者 10,000 円を納付しなければならないと定められています。
救急認定薬剤師の給与事情
「救急認定薬剤師」の資格を取得した場合、給与はどのように変わるのでしょうか。
一般的に「認定薬剤師」や「専門薬剤師」の資格を取得した場合、給与に「資格手当」として付与されることが多いようです。
職場にもよりますが、月5千円〜数万円程度のことが多いようです。
「救急認定薬剤師」に関しても同様に手当を支給されることが考えられます。
また、「救急認定薬剤師」は救急の現場に携わるため、勤務に夜勤があるケースも多いでしょう。
このため、「夜勤手当」があると思われるので一般的な病院に日勤帯で勤務する薬剤師に比べると何割か給与が上がると予想されます。
救急認定薬剤師に必要なスキル
「救急認定薬剤師」になるには、申請資格を満たしたうえで認定試験に合格する必要があります。
次に見ていきましょう。
道徳心とモラル
「救急認定薬剤師」には「道徳心」と「モラル」が欠かせません。
救急の現場には様々な病状の患者様がいます。
命に関わる現場であり、真摯に仕事に向き合う姿勢を忘れてはいけません。
他職種への理解も必要
救急医療では、医師・看護師など多職種と連携して働くことも多いです。
薬剤師として必要な業務を行うことはもちろん、医師がどのようなことを考えているか、看護師がサポートを求めていないか、周りの職種の様子もよく見ることが大切です。
状況を多角的に把握するスキル
救急の現場では、治療に対し、迅速さと的確さが求められます。
非常に難しい判断を求められるケースも多い中で、職務を全うするには「状況を多角的に把握する」能力が必要でしょう。
救急認定薬剤師にむいている人の特徴
- 自己研鑽に励むことができる人
- 自ら仕事を探せる人
- チームワークを大切にできる人
- 精神的・肉体的にタフな人
- 仕事に求めるものは、お金よりやりがい!といえる人
「救急認定薬剤師」には日々の勉強が欠かせません。
幅広い知識・新しい知識を得るため、学び続ける姿勢を忘れない人が向いていると言えるでしょう。
また、救急の現場では、指示を待って仕事をしていては間に合わないこともあります。
自ら何をすべきか、先々を考えることができる人が向いています。
また、多職種と連携して仕事をするうえでは、チームワークが何より大切です。
相手を思いやる気持ち、理解しようとする気持ちがチームワークを高め、より良い治療につながることでしょう。
救急の現場には、予測できない事態があります。
精神的にも肉体的にもタフでなければ務まらないかもしれません。
「救急認定薬剤師」といっても、他の薬剤師に比べ特別給料が高くなることは考えにくいです。
求められる業務からすると、むしろ給与を低く感じることもあるかもしれません。
しかし、薬剤師としてこれほど直接的に治療に関わる職場はないでしょう。
治療に貢献できる喜び・やりがいを感じることができる人が「救急認定薬剤師」に向いているのではないでしょうか。
救急認定薬剤師のやりがいまとめ
- 救急認定薬剤師のやりがいは多様な疾病にかかわり人命を助けられるところにある
- 救急認定薬剤師には高いモラルが求められる
- 救急認定薬剤師はチーム医療に携わりたい人などにむいている
「救急認定薬剤師」は救急の現場で薬剤師の職能を最大限発揮することを目的として作られた薬剤師の認定資格です。
緊急度・重症度が高い患者様の多い救急現場だからこそ、「救急認定薬剤師」の知識・経験が治療を助けることもあるでしょう。
薬剤師としての提案・業務が治療に役立った!と実感できることは、「救急認定薬剤師」にとって、なによりの「やりがい」となるのではないでしょうか。
また、命に関わる医療現場で働く「救急認定薬剤師」には、精神的・肉体的なタフさや幅広い高度な薬剤知識などとともに、医療人としての高いモラルも欠かせません。
医師や看護師など多職種と連携して、より良い治療を提供しようとすることは、薬剤師としても、やりがいを感じる機会も多いでしょう。
ぜひチーム医療に携わりたい!という人は「救急認定薬剤師」が向いているかもしれませんね。
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