オンライン服薬指導とは
オンライン服薬指導とは「パソコンやスマートフォン等の情報通信機器を活用し、患者の状態等を確認しつつ実施する服薬指導」と定義されています。
かつて、服薬指導は「対面」で行うことが義務付けられていました。
しかし、僻地や離島など医療資源が十分でない場所に住む患者や様々な理由により来局が困難な患者もいます。
2019年の改正薬機法により、オンラインでの服薬指導が解禁となりました。
本来、オンライン服薬指導は2020年9月から施行される予定でしたが、2020年4月厚生労働省より、新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取り扱いについてを示す、いわゆる「0410通知」が発表されました。
これにより、オンライン服薬指導は予定されていたよりも早く、より実施要件を緩和する内容での特例的なスタートとなりました。
もともとオンライン服薬指導は「映像および音声」でのコミュニケーションが取れる状態で行うことが原則と考えられていました。しかし、0410通知では「音声のみ(電話)での服薬指導も可」などの特例的な条件も含まれています。
その後の2022年3月の改正では、オンライン服薬指導の実施範囲について制限の緩和が見られました。
また、2022年9月には患者の希望がある場合や異議がない場合には「薬剤師が薬局以外の場所からオンライン服薬指導ができる」ようにもなっています。
オンライン服薬指導の対象となる患者
2022年3月の改定により、オンライン服薬指導の対象範囲が拡大されました。
以前のオンライン服薬指導は、対象範囲が次のように定められていました。
- 同一内容またはこれに準ずる内容の処方せんにより調剤された薬剤について、あらかじめ対面による服薬指導を行ったことがある場合に利用できる
- オンライン診療あるいは訪問診療に基づく処方せんのみ利用できる
- 処方せん原本が必要
この場合、初回の方や病院を受診して処方せんを受け取った方などが対象外となり、オンライン服薬指導を受けられる方は限定的でした。
2022年3月の改定によりオンライン服薬指導の対象は次のようになっています。
- 薬剤師の判断により、初回の患者も利用できる
- オンライン診療・訪問診療だけでなく、すべての診療の処方せんで利用できる
- 原則としてすべての薬剤が対象
- 処方せん原本でなく、FAXやメール等での受付も可能
この対象拡大により、ほぼすべての患者がオンライン服薬指導を受けることが可能になりました。
実際、オンライン服薬指導をした場合「服薬管理指導料4」という管理料が算定されますが、対面での服薬管理料と同等になっています。
オンライン服薬指導は、やむを得ない場合や特別な場合のみ行うものではなく、どのような患者も利用可能な制度となり、患者の利便性も高まったと言えるでしょう。
(https://www.phchd.com/jp/medicom/park/tech/emh-onlinemedicineより抜粋・意訳)
オンライン服薬指導に必要な「電子お薬手帳」とは
薬局で処方せんを出すと「お薬手帳」の有無を確認されます。
お薬手帳は、現在服用中の薬やこれまでの薬の服用歴が一目でわかり、アレルギーや副作用の管理なども含め安全な投薬治療をするのに非常に有用なツールです。
これまでのお薬手帳は患者自身が処方せんと共に薬局・医療機関に持っていくものでしたが、オンライン服薬指導においてはお薬手帳を持参することができません。
その時に役立つのが「電子お薬手帳」です。
もともと電子お薬手帳は、スマートフォンのアプリ形式のものが多く、病院・薬局行く際に忘れないことや手帳自体の紛失を防げることなどがメリットの一つでした。
さらに、最近の電子お薬手帳には様々な機能が追加され、手帳内の情報をオンラインで共有できる機能などもあります。
この機能があれば、オンラインで診療を行う医師や服薬指導を行う薬剤師も、患者の電子お薬手帳内のデータを閲覧・確認することが可能です。
オンラインでも、より安心安全な治療を行うためには電子お薬手帳の有用性は高いと言えるでしょう。
(https://www.phchd.com/jp/medicom/park/tech/emh-onlinemedicine より抜粋・意訳)
オンライン服薬指導の導入を考えている医療関係者がするべきこと
オンライン服薬指導の導入を考えている場合、整えなければならないものがあります。
その一つが「通信環境」です。
オンライン服薬指導の実施においては、情報セキュリティ及びプライバシー保護の観点から、必要な通信環境を確保する必要があるとされています。
また、「研修」の準備も必要です。
オンライン服薬指導を実施する場合、薬剤師には情報通信機器の使用や情報セキュリティに関する知識も必要です。
そのため、「薬局開設者はオンライン服薬指導を実施する薬剤師に対し、オンライン服薬指導に特有の知識等を習得させるための研修材料等を充実させること」とされています。
さらに「薬剤の交付」のための準備も必要です。
オンライン服薬指導では薬剤の交付は郵送・配送で行われることが一般的です。
郵送・配送時に薬剤の品質が保持され、確実に患者本人へ届くように、あらかじめ配送手順を定めること、必要な措置を講じることも薬局開設者に求められています。
(https://www.phchd.com/jp/medicom/park/tech/emh-onlinemedicine より抜粋・意訳)
オンライン服薬指導の流れ
オンライン服薬指導とはどのような流れなのでしょうか。
対面での服薬指導との違いを含め、確認していきましょう。
診療
患者は症状に応じて、対面・オンラインなどで医療機関の診療の後に処方を受けます。
オンライン診療からオンライン服薬指導という形で、家から全く出ず完結させることも可能です。
処方箋の受付
薬局で処方せんを受け付けて調剤を行います。
現在すべての薬局がオンライン服薬指導に対応しているわけではありません。
オンライン服薬指導を希望する場合は、対応できる薬局に処方せんを提出する必要があります。
薬局での処方せん受付は患者が持参・郵送した処方せんに基づくとされていますが、オンライン服薬指導を希望する場合、患者の申し出により、医療機関から薬局に直接送付されます。
また現在は、備考欄にオンライン服薬指導希望と記載があれば、FAXやメールで送付された処方せんでもオンライン服薬指導が実施できます。
オンライン服薬指導
薬剤師から患者に連絡をする形で、患者のプライバシーや情報セキュリティへの配慮を行ったうえでオンライン服薬指導を実施します。
オンライン服薬指導のやり方は、薬局ごとに専用ソフトを使用したり、アプリを使用したりとさまざまです。
特に高齢の患者の中には、電子機器の操作を難しく感じる方も多くオンラインでのやり取りには丁寧な説明ややり取りが必要です。
服薬指導の内容自体は、薬局で対面で行う場合と変わりません。
薬剤師は処方された薬剤の内容を確認し、用法用量・注意する点などを患者に伝えます。
映像を通して行うため、より情報が正確に伝わるような配慮も必要でしょう。
会計
オンライン服薬指導の支払いは、配送業者による代金引換のほか、銀行振込、クレジットカード決済、その他電子決済等の支払い方法により実施して差し支えないとされています。
薬局ごとにツールを準備し、オンライン服薬指導の前に患者さんにお伝えしておく必要があるでしょう。
発送
オンライン服薬指導が終了したら、調剤された薬を患者に発送します。
薬局は薬剤の品質保持に配慮して発送しなければなりません。
まとめ
この記事では、オンライン服薬指導をご紹介しました。
近年のコロナ禍もあり、オンライン服薬指導は急激に変化・進化しています。
感染防止対策だけでなく、離島や僻地など薬局が少ないエリアの方や来局困難な方など、オンライン服薬指導はさまざまな患者の利便性を上げることも可能です。
しかし一方で、患者の中心となる高齢者が機器の操作が必要なオンラインに対応できるのか、配送料の問題、配送時の品質保持などの課題もあります。
オンライン服薬指導はまだ始まって間もない制度です。
今後、課題を解消し、より多くの人の健康管理に役立つオンライン服薬指導となることが期待されます。
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