子供がケガをして、痛がっているから家にあるモーラステープを貼っても大丈夫かな?
モーラステープはよく効く貼り薬だと言われていますが、重篤な副作用もあり安易に使うのは危険です。
特にお子さんに使う場合は十分に注意してください。
モーラステープは使用前の理解が重要
モーラステープは医師による処方で手に入る貼り薬(貼付剤)です。
貼り薬として腰痛や筋肉痛などの痛みに高い効果を発揮することで手軽に使う人も多いですが、かぶれや光線過敏症などの副作用が出る場合もあります。
モーラステープとは?
モーラステープはケトプロフェンを主成分とした貼り薬です。
処方せん医薬品(医師による処方がないと手に入らない医薬品)ではありませんが、同じ名前の市販品はなく、通常は医師による処方で手に入ります。腫れや痛みを鎮める目的で使う貼り薬です。
テープの大きさには大・小あり、医師が部位や範囲によってどちらを使うか判断し、処方します。
モーラステープの作用機序
体内で炎症などを引き起こすプロスタグランジン(PG)はアラキドン酸からシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素によって作られます。
このCOXを働かないようにして、PGを作らせないようにするのが、モーラステープの主成分ケトプロフェンです。
モーラステープは炎症を引き起こすPGを局所的に作らないようにして、炎症を抑えます。
モーラステープの主成分「ケトプロフェン」
ケトプロフェンはNSAIDs(非ステロイド抗炎症薬)と言われるグループの薬です。
ロキソニンの主成分ロキソプロフェンナトリウム水和物などもNSAIDsに含まれます。
ステロイドにも炎症を抑える強い効果があります。ですが、NSAIDsはステロイドと化学構造が異なるためNSAIDsと別にグループ分けされています。
ケトプロフェンは優れた抗炎症薬で、テープのみならず、シップ、ローション等の外用剤(がいようざい:貼ったり塗ったりする薬)の他に筋肉注射や坐薬で使われることもあります。
飲み薬や注射、坐薬は全身の炎症を抑え、貼り薬のような痛いところだけに貼る薬は貼ったところに効果を示します。
効能・効果について
モーラステープの添付文書によると、効能・効果は下記のようになっています。
○下記疾患並びに症状の鎮痛・消炎
引用元:モーラステープ添付文書
腰痛症(筋・筋膜性腰痛症、変形性脊椎症、椎間板症、腰椎捻挫)、変形性関節症、肩関節周囲炎、腱・腱鞘炎、腱周囲炎、上腕骨上顆炎(テニス肘等)、筋肉痛、外傷後の腫脹・疼痛
○関節リウマチにおける関節局所の鎮痛
用法・用量をきちんと守ろう
貼り薬であっても薬が体の中に入ります。医師や薬剤師の指導に反して、枚数を多く貼れば貼るほど体に入る薬の量が増え、副作用が出る可能性があります。
かぶれなども起こしやすくなる場合もあります。
貼り薬と言えども医師・薬剤師から指示された枚数、部位、1日回数(用法・用量)を守って使用しましょう。
恐ろしい副作用「光線過敏症」とは?
あまり聞き慣れないかもしれませんが、モーラステープを使用することで「光線過敏症」という副作用が出ることがあります。
本剤の使用により重篤な接触皮膚炎、光線過敏症が発現することがあり、中には重度の全身性発疹に進展する例が報告されているので、 疾病の治療上の必要性を十分に検討の上、治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ使用すること。
引用元:モーラステープ添付文書
モーラステープが引き起こす「光線過敏症」とは?
では「光線過敏症」とはどういった症状なのかというと、下記のような症状です。
光線過敏症は、普通な方では何でもないような光線曝露で、異常な皮膚症状が生じます。
引用元:ひふのクリニック人形町
光線過敏症には光線に当たらない限りその状態が起こらない狭い意味の光線過敏症と、別の原因の病気が光線に当たることで、誘発されたり悪化したりする広い意味での光線過敏症があります。
光線過敏症には年齢により生じやすい病気があります。
光線過敏症にならないためには
まず、モーラステープ使用により光線過敏症になったことがある、またはその疑いがある場合は医師と相談の上使用を控えましょう。
日光を分解すると赤外線、可視光線、紫外線に分けられますが、特に紫外線とモーラステープの成分が出会った時に光線過敏症が出ることがあるようです。
使用中は天候・季節にかかわらず、貼付部を衣服、サポーター等で遮光するようにしましょう。
白や薄手の服は日光を透過させる恐れがあるので色物の衣服等を着用しましょう。
また使用中はもちろん、使用終了後数日から1カ月程度経過してから症状が出ることがあるので、使用後も当分の間テープを貼った部位を日光に当てずに皮膚の状態に注意しましょう。
皮膚の異常が認められた場合には直ちにテープの使用を中止し、患部を遮光し、処方医や薬剤師に相談しましょう。
治療法はあるの?
光線過敏症の治療法は、下記が代表的です。
- 強力なステロイド外用剤を塗布
- ステロイド剤の内服、点滴静注
- 抗ヒスタミン剤の投与
原因となる薬剤を中止し、直ちに皮膚科専門医への受診が必要です。
最も重要なのは【予防】
光線過敏症を起こさないためには予防することが一番です。
医師・薬剤師の指導を守ることはもちろん、薬の説明書(薬剤情報提供書)、最近ではテープの袋に注意が書いてあるので必ず読んでから使用してください。
モーラステープの『危険』に要注意!!
前述の通りモーラステープには副作用があるので、一つずつ説明していきます。
重大な副作用
モーラステープにはこれらの重大な副作用があります。
このような症状が出た場合には、ただちに使用を中止する必要があります。
- ショック、アナフィラキシー
- 喘息発作の誘発
- 接触皮膚炎
- 光線過敏症
- その他の副作用
ショック、アナフィラキシー
ショック、アナフィラキシー(蕁麻疹、呼吸困難、顔面浮腫等)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には使用を中止し、適切な処置を行うこと。
引用元:モーラステープ添付文書
喘息発作の誘発(アスピリン喘息)
喘息発作を誘発することがあるので、乾性ラ音、喘鳴、呼吸困難感等の初期症状が発現した場合は使用を中止すること。気管支喘息患者の中には約10%のアスピリン喘息患者が潜在していると考えられているので留意すること。なお、本剤による喘息発作の誘発は、貼付後数時間で発現している。
引用元:モーラステープ添付文書
接触皮膚炎
本剤貼付部に発現した瘙痒感、刺激感、紅斑、発疹・発赤等が悪化し、腫脹、浮腫、水疱・びらん等の重度の皮膚炎症状や色素沈着、色素脱失が発現し、さらに全身に皮膚炎症状が拡大し重篤化することがあるので、異常が認められた場合には直ちに使用を中止し、患部を遮光し、適切な処置を行うこと。なお、使用後数日を経過してから発現することもある。
引用元:モーラステープ添付文書
光線過敏症
本剤の貼付部を紫外線に曝露することにより、強い瘙痒を伴う紅斑、発疹、刺激感、腫脹、浮腫、水疱・びらん等の重度の皮膚炎症状や色素沈着、色素脱失が発現し、さらに全身に皮膚炎症状が拡大し重篤化することがあるので、異常が認められた場合には直ちに使用を中止し、患部を遮光し、適切な処置を行うこと。なお、使用後数日から数カ月を経過してから発現することもある。
引用元:モーラステープ添付文書
その他の副作用
皮膚剥脱、局所の発疹、発赤、腫脹、瘙痒感、刺激感、水疱・びらん、色素沈着等、皮下出血、蕁麻疹、眼瞼浮腫、顔面浮腫、消化性潰瘍
引用元:モーラステープ添付文書
相互作用の危険
別の薬品と併用することでも相互作用で副作用が出ることがあります。
代表的なものとしては関節リウマチの治療等に使用されるメトトレキサートとの相互作用で、以下の危険性が報告されています。
ケトプロフェンとメトトレキサートを併用した場合、メトトレキサートの腎排泄が阻害されることが報告されている。
引用元:モーラステープ添付文書
モーラステープを使ってはいけない人
下記の患者にモーラステープを使用するのは禁忌とされています。
(1)本剤又は本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者
引用元:モーラステープ添付文書
(2)アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤等による喘息発作の誘発)又はその既往歴のある患者
(3)チアプロフェン酸、スプロフェン、フェノフィブラート並び にオキシベンゾン及びオクトクリレンを含有する製品(サンス クリーン、香水等 )に対して過敏症の既往歴のある患者
(4)光線過敏症の既往歴のある患者
(5)妊娠後期の女性
モーラステープの使用に注意がいる人
モーラステープを使用してはいけないとされているわけではありませんが、下記に該当する方の使用には注意が必要です。
安全性が確立していないため、モーラステープは子供へは使用しないことを強くお勧めします。
低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児に対する安全性は確立していない(使用経験が少ない)。
引用元:モーラステープ添付文書
妊娠中・授乳中における使用の注意
前述の通り、妊娠後期の女性にはモーラステープは使用できません。
妊娠後期以外の妊婦さんや授乳中の女性への使用も、安全性が確立されていないため危険性が高いのは変わらないので、安易に使用することはやめましょう。
妊婦(妊娠後期以外)、産婦、授乳婦等に対する安全性は確立していないので、これらの患者に対しては、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用すること。
引用元:モーラステープ添付文書
病気や症状に応じた注意事項
使っていると炎症を抑えるので、感染症による腫れなども目立たなくすることがあります。
モーラステープの使用は対症療法(原因を治すのではなく痛みを和らげる)のため、症状に応じて別の薬物療法や薬物療法以外の治療も考慮する必要があります。
また漫然と使用することを避け、使用は必要最小限にとどめ、長く使用する場合にはかぶれなどの副作用に注意が必要です。
モーラステープは関節リウマチの鎮痛にも効果がありますが、主な治療薬であるメトトレキサートには相互作用があるため、専門医の適切な治療が行われた上で、それでも関節に痛みの残る患者のみに使用されます。
しかし、これまでのお話で紹介した光線過敏症をはじめとする重篤、軽微な副作用は必ずしも起こるものではありません。
また、薬の相互作用も経口例での経験であり、テープの使用で必ずしも起こるものではありません。
記事を読んで怖くなったからと言って、何の異常もないのに急にテープの使用を中止する必要はありません。
子供にモーラステープを貼って良い?
前述の通り、子供へのモーラステープの使用は安全性が確立されていないためお勧めしません。
子供本人に処方されたのであれば治療上の有益性が危険性を上回ると判断されたので問題ありませんが、家族が処方されたモーラステープを使いまわして子供に貼るのはやめましょう。
モーラステープ20mgを子供に貼った場合に吸収される量
1枚のモーラステープ20mg(テープ1枚中に主成分ケトプロフェン20mg含有)を成人男性の背中に24時間貼ると2.5㎍・hr/mlといった量の主成分が体に入ります。
モーラステープと同じ成分で、ケトプロフェンの坐薬75mg(坐薬1個に主成分ケトプロフェン75mg含有)を大人に1本投与すると24時間までで15.5㎍・hr/mlといった量の主成分が体に入ります。(テープの6.2倍程度の量)
子供は年齢によって、成人の何割か少ない量の薬を投与することが多いです。
生まれたばかりの赤ちゃんでは成人の1/5-1/10程度の量、3歳で1/3量、7.5歳で1/2量を使うことが多いようです。*
生まれたばかりの赤ちゃんにはあまりテープを使うことは少ないかもしれませんが、元気に遊ぶ3歳以降のお子さんでは、遊びの最中に打ち身なども出来てくる年ごろかと思います。
そうなるとモーラステープの吸収量は坐薬に比べて1/6程度に収まり、医師が処方した場合であればお子さんにも安全に使えると思われます。
(*新小児薬用量改訂第8版 診断と治療社より)
モーラステープと同じ有効成分の処方薬に注意!
近年は後発医薬品(ジェネリック医薬品)といって「先発医薬品(新薬)の特許が切れた後に販売される、先発医薬品と同じ有効成分、同じ効能・効果をもつ医薬品」が主流になってきています。
後発医薬品(ジェネリック医薬品とも呼びます。)とは、先発医薬品(新薬)の特許が切れた後に販売される、先発医薬品と同じ有効成分、同じ効能・効果をもつ医薬品のことです。
引用元:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
先発医薬品より安価で、効き目や安全性は先発医薬品と同等であり、欧米では幅広く使用されています。
モーラステープは先発医薬品で、前述の通り「ケトプロフェン」が主成分のテープです。
後発医薬品は名前に薬の主成分名を使うことが多く「ケトプロフェンテープ」といったものや、「ケトプロフェン坐剤」といったものがあります。
またケトプロフェンを主成分とした注射剤もあり、そちらにも先発・後発医薬品があります。
「モーラス」と書かれていなくても主成分が同じ薬の場合があるので、医療機関にかかる時はしっかりお薬手帳を活用しましょう。
お薬手帳には市販で使用している医薬品やサプリメントなども書いておくと良いでしょう。
ロキソニンテープとの違い
ロキソニンテープの主成分は「ロキソプロフェンナトリウム水和物」と言います。
あの有名な飲み薬、ロキソニン錠の主成分をテープにしたものです。
現在のところ、ロキソニンテープには光線過敏症の報告はありません。
また保険医療機関で処方する際、ロキソニンテープの添付文書にはモーラステープと異なり、適応症に腰痛症と関節リウマチの鎮痛がありません。
サロンパスでも代用可能!?
結論から言うと、子供へのモーラステープの代用としてはサロンパスでも可能です。
しかしモーラステープに比べると、サリチル酸メチルを主成分にしているサロンパスの鎮痛作用は弱いと言われています。
ただ、サロンパスには下記のメリットがあり、安全性の高さもあります。
- 入手が容易な市販薬である
- 子供、妊婦にも使用できる
- 喘息があっても禁忌ではない
喘息がある場合や子供・妊婦には、事前に痛みがある時に使って良い薬を医師と相談して、手元に置いておくのが原則です。
切らしてしまった時や受診が出来なくて痛みが強い場合には、注意深く最小量を使用すればサロンパスは安全性は高いと思われます。
ただし、サロンパスも医薬品であるため絶対に安全とは断言できませんので、子供、妊婦、喘息等の体質がある方への使用を前提として購入する場合、必ず薬剤師・登録販売者に相談してから購入してください。
テープ剤とパップ剤の違い
意外と知らない人も多い、テープ剤とハップ剤の違いは以下の通りです。
テープ剤
- 薄いタイプの貼り薬
- 貼った部分を冷やしも温めもしない
- 粘着力が強く、関節部など動く所にも貼れる
- はがすときに皮膚も一緒に剥がしてしまいダメージを与えることもある
パップ剤
- 水分を含む貼り薬
- 貼った部分を冷やす
- 粘着力は比較的弱く、動く部分に貼るとはがれやすい
- 比較的皮膚にやさしい
参考:東浦平成病院
【年齢別】子供でも使用可能な貼り薬を紹介!
お子さんにも使える市販の貼り薬を年齢別に紹介いたします。
※商品名には似たものがあるため、購入の際には年齢やその他問題がないか必ず説明書きで確認したり、薬剤師・登録販売者に相談してください。
※処方により小児でも問題なく使用できる成分でも、市販薬では安全性を考慮し使用できない場合があります。また、同じ成分であっても、会社によって使用可能年齢が異なる場合があります。詳しくは該当商品の説明書きを確認するか、薬剤師・登録販売者に確認してください。
11歳未満でも使用可能な貼り薬
サリチル酸メチルやサリチル酸グリコールを主成分とするサロンパスシリーズは11歳未満のお子様にも保護者の指導監督のもとで使用可能です。
主な商品として、サロンパスシリーズ(サロンパスEXを除く)、トクホンシリーズ(Loxyテープを除く)、ハリックス55EXなどがあります。
11歳から使える「インドメタシン」製薬
インドメタシンを主成分とする一部の製品は11歳から使用可能です。
サロンパスEXシリーズなどが該当します。
15歳以上から使用可能な貼り薬
基本的にはどの貼り薬も15歳以上であれば使用可能です。
ロキソニンシリーズ、ボルタレンシリーズ、フェイタスシリーズなど。
子供の肩こり・腰痛・筋肉痛のときの湿布・鎮痛消炎薬
基本的には上記で紹介したどの製品でもこれらの症状に使えます。
お子さんの年齢に応じて使い分けてください。
ただし記載された期間使用しても症状が改善されない場合は、医療機関を受診することをおすすめします。
まとめ
- 子供自身が医師に処方されたモーラステープなら子供に使用しても問題はありませんが、他人に処方されたものを使いまわすのは家族間でも絶対にやめましょう。
- 光線過敏症を予防するため、モーラステープの使用中はもちろん、使用後1カ月程度は貼付部位に日光を当てないようにすることが重要。
- 先発医薬品や後発医薬品で同じ主成分でも製品名が異なる場合があるので、お薬手帳を活用して医師や薬剤師の指示に従いましょう。
- 市販の貼り薬は年齢により使える成分が異なります。同じ成分でも製品により使用できる年齢は異なり、処方により小児でも問題なく使用できる成分でも、市販薬では安全性を考慮し使用できない場合があります。
- 市販品は似た商品名で、主成分が異なることがある。購入前は箱に書いてある製品情報をよく読み、問題なく使えるか確認する事が重要です。
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