かかりつけ薬剤師になってから、仕事量が増えた…。
担当する患者さんとの相性が悪くて仕事が苦痛で仕方ない…。
このような悩みを持つかかりつけ薬剤師の方は少なくないのではないでしょうか。
今回の記事では、かかりつけ薬剤師制度について薬剤師の立場から解説し、現場の薬剤師が抱えるストレスと対処法を紹介します。
そもそもかかりつけ薬剤師とは何?
かかりつけ薬剤師は地域包括システムの一翼を担い、薬に関していつでも気軽に相談できる薬剤師とされています。
確かにいつでもプロのアドバイスを受けられるのは心強いですよね。
しかし、これ、薬剤師側からしたら結構な負担になる制度だと思いませんか?
厚生労働省による定義
厚生労働省は、かかりつけ薬剤師・薬局が持つべき3つの職能として以下の3点を挙げています。
①服薬情報の一元的・継続的把握
②24時間対応・在宅対応
③医療機関等との連携
(参考:厚生労働省「患者のための薬局ビジョン」)
少し分かりづらいので、具体的な施策を次で解説します。
服薬情報の一元的・継続的把握
厚労省によると、「服薬情報の一元的・継続的把握」のために以下の行動が求められています。
・主治医との連携、患者からのインタビューやお薬手帳の内容の把握等を通じて、患者がかかっ ている全ての医療機関や服用薬を一元的・継続的に把握し、薬学的管理・指導を実施。
・患者に複数のお薬手帳が発行されている場合は、お薬手帳の一冊化・集約化を実施
つまり、「継続的に患者の全ての医療情報を把握した上で薬のアドバイスを行いましょう」ということです。
患者の服薬情報を理解した上で処方を行うのは当然ですが、それを継続的に管理するのはかなり大変なことですよね。
24時間対応・在宅対応
厚労省によると、「24時間対応・在宅対応」のために以下の行動が求められています。
・開局時間外でも、薬の副作用や飲み間違い、服用のタイミング等に関し随時電話相談を実施。
・夜間・休日も、在宅患者の症状悪化時などの場合には、調剤を実施。
・地域包括ケアの一環として、残薬管理等のため、在宅対応にも積極的に関与。
「営業時間でも夜間休日でもかかりつけ患者の対応をしましょう」ということです。
厚労省は参考として、「現状でも半分以上の薬局で24時間対応が可能。(5.7万のうち約3万の薬局で基準調剤加算を取得)」を挙げていますが、それが薬剤師の大きな負担になっている事実を無視してはいけません。
休みの日も患者対応をしないといけないなんて、普通に無理でしょ…
医療機関等との連携
厚労省によると、「医療機関等との連携」のために以下の行動が求められています。
・医師の処方内容をチェックし、必要に応じ処方医に対して疑義照会や処方提案を実施。
・調剤後も患者の状態を把握し、処方医へのフィードバックや残薬管理・服薬指導を行う。
・医薬品等の相談や健康相談に対応し、医療機関に受診勧奨する他、地域の関係機関と連携。
「調剤後も患者さんのフィードバックを医療機関へ行いましょう」ということです。
医療機関との積極的な連携は調剤薬局にとって重要な役割を果たします。
かかりつけ薬剤師の致命的な欠陥
患者からしたらこの上なく頼りになる制度ですが、そもそもこの制度、構造的に致命的な欠陥があります。
それは、「個人ないし少数の薬剤師で運営している薬局で24時間対応はほぼ不可能である」ということです。
減点制度もある
2017年4月1日から、「かかりつけ薬局の基本的な機能に係る業務を1年実施していない保険薬局」は調剤基本料の50%しか算定ができなくなりました(処方受付回数が月600回以下の薬局を除く)。
調剤薬局の構造を考えたら無理がある制度なのに、減算制度を加えるのはなかなか酷です。
かかりつけ薬剤師が抱えるストレス
かかりつけ薬剤師になった薬剤師の多くが次のようなストレスを抱えています。
①24時間対応によるストレス
②ノルマの達成がストレス
③患者との相性が良くない
24時間対応によるストレス
かかりつけ薬剤師は、24時間対応を求められることにより、大きなストレスを抱えることがあります。
薬剤師は日中の業務と並行して、深夜や休日にも対応しなければなりません。
◉24時間対応による日常生活への影響
・仕事とプライベートの境界が曖昧になる
・自分の時間やリラックスする時間が持てない
常に頭の中に仕事があることで、ストレスを感じる薬剤師が多くいます。
ノルマの設定がストレス
調剤薬局では、「かかりつけ薬剤師の同意書を●●件獲得する」というノルマが薬剤師に課せられることもあります。
これは、かかりつけ薬剤師指導料の診療報酬の点数が高いことによります。
会社からのプレッシャーが日々のストレスになっているようです。
患者さんとの相性がよくない
かかりつけ薬剤師として働く中で、患者との相性がうまくいかないケースもあります。
対人スキルやコミュニケーション能力は個人によって異なるため、一部の患者とのコミュニケーションが難しい場合もあります。
このような状況では、ストレスが溜まる可能性が高いです。
かかりつけ薬剤師を辞めたい場合
かかりつけ薬剤師を辞めたい場合、勢いで辞めてしまう前に以下の行動を行うことをおすすめします。
- キャリアプランを再考する
- 上司に相談する
- 転職先を探す
キャリアプランを再考する
キャリアプランを再考する場合、かかりつけ薬剤師は自分の目標や将来の展望を考慮に入れることが重要です。
この仕事の負担やストレスが大きいと感じている場合、自分のキャリアについて真剣に考える必要があります。
再考する際には以下の点を考慮してみてください
- 自分のスキルや興味に合わせた他の職種や業界への転身の可能性を探る
- 学習やスキルアップのための教育プログラムやトレーニングを検討する
これらの選択肢を検討しながら、自分のキャリアプランを再評価し、将来の自分に向けた新たな方向性を見つけることが重要です。
上司に相談する
かかりつけ薬剤師を辞めたい場合、まずは上司に相談することが重要です。
上司はあなたの仕事をサポートする立場であり、あなたの意思や悩みを理解してくれるでしょう。
全く相談に乗ってくれない上司の場合、その職場に居続けるのは長い目で見ても良くないでしょう。
転職先を探す
もし上司が相談に全く乗ってくれない、かかりつけ薬剤師の仕事を続けても自分が希望するキャリアには良い影響がない…という場合は、転職することが最も現状の改善に繋がる可能性が高いです。
働きながら転職活動をするのは大変ですが、転職エージェントに登録すれば求人を探したり、面接スケジュールの管理を代行してくれます。
セルワーク薬剤師も転職エージェントです。
まずはどんな求人があるのか見るだけ、今の悩みを相談したいだけ、という場合も歓迎しておりますので、お気軽にご相談ください!
まとめ
かかりつけ薬剤師は、地域の人々の健康を身近でサポートできるためやりがいのある仕事だと言えますが、一方で求められる業務量が増えるため、負担がかなり大きくなってしまいます。
無理をして働き続けて体を壊してしまっては、意味がありません。
自分のライフプランやワークライフバランスを考えて、今の自分に最適なキャリアプランを考えましょう。
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