企業で働く薬剤師の年収事情!
薬剤師の求人で「企業」というと、多くの場合「製薬会社(製薬企業)」を意味します。
製薬会社は年収が高いというイメージを持つ方も少なくありませんが、実際のところはどうなのでしょうか。
上記のグラフによると、薬剤師の年収が1,000万円を超えるのは製薬会社のみとなっています。
「企業薬剤師は年収が高い」は事実と言えるのではないでしょうか。
2021年度の製薬会社の年収ランキング
AnswersNewsによると、2022年の製薬会社の年収ランキングは下記のようになっています。
11位までの全ての企業が平均年収1,000万円超えとなっています。
この数字は年収の「上限」ではなく「平均」なので、実績次第で更に年収を上げられる可能性もあるということです。
企業薬剤師の働き方
一口に企業薬剤師と言っても、その職種は多岐にわたります。
企業薬剤師の仕事は実際に入社した経験がないと想像しづらいため、どのような職種があるのかはあまり知られていないところではないでしょうか。
管理薬剤師
調剤薬局等でも管理薬剤師は存在しますが、企業の管理薬剤師には大きく分けて「従業員の監督」と「医薬品等の管理」の2つの役割があります。
本社・支社での勤務の場合、医薬品の在庫管理や医療従事者へ医薬品情報を報告する業務がメインです。
工場での勤務の場合、医薬品製造上の品質管理や他のスタッフの監督がメインです。
一般薬剤師から管理薬剤師になるために資格は必須ではありませんが、5年以上の実務経験が求められます。
医薬情報担当者(MR)
MRは製薬企業の営業職です。ただし営業とはいっても、他業種の営業とは異なり直接医薬品を販売しません。
医療機関に対して、自社医薬品の有効性や安全性・副作用などに関する情報を提供する役割を担います。
医療従事者から有害事象など臨床情報を収集し、勤務する企業に報告することもMRの重要な役割です。
厳密に言えばMRとして働くのに薬剤師の資格は必須ではありませんが、業務の関係上医薬品に関する知識が必須となります。
業界団体によるMR認定試験に合格していることが必須というわけではないものの、ほとんどの製薬企業がこの試験に合格してMR認定証を得ることを求めているため、実質的にはMR認定試験の合格証は必須と言えます。
研究
一般的に企業薬剤師の業務として想像されているのはこちらが近いのではないでしょうか。
新薬を開発するため研究を重ね、アイデアを実際に医薬品にするために設計や製造を行います。
非臨床で薬剤を開発する仕事であり、非常に高度な知識が求められます。
求人対象となるのは基本的に修士以上の課程修了者です。
開発
上記の「研究」で開発した薬剤に対し、臨床試験を通じて安全性の確認を行う仕事です。
研究開発職の仕事内容は勤める企業によっても大きく異なり「研究」と「開発」に分けて考えられることも多いですが、新薬を開発するという意味で両者は同じ目的を持っています。
研究開発は製薬企業の利益の源泉です。
新薬は販売までに20年近くかかる薬もありますが、膨大な候補薬の中から臨床試験に行ける薬はほんのわずかです。
治験コーディネーター(CRC)
CRCは治験責任医師の指導のもと、治験に関わるチームの構成や業務を行い、治験業務全般をサポートします。
治験がズムーズに進行するように調整するのが主な仕事です。
患者さんに対して治験内容の説明や不安を軽減するための相談相手として、サポートやケアを行うこともあります。
治験を行う時は製薬企業において勉強会が開催されるので、治験内容を理解することはもちろん疑問点を洗い出し、解消しておく必要があります。
品質管理・品質保証
製薬会社の品質管理部門では製造する医薬品の原料・製造工程・最終製品まで全ての品質を管理します。
品質不良を発生させないことは当然として、原料や製品の品質のばらつきを調べる品質確認試験やデータ解析などを行います。
外注先から納品される品物の検査や部品の不具合、不良に関する対応などの監査も業務に含まれることもあります。
品質保証部門では医薬品の設計から承認、製造、品質確認試験、流通、適正使用まで幅広く品質を管理します。
適正な品質管理がおこなわれているかを監査する立場であり製造部門から独立していることが多いです。
医薬品情報管理者(DI)
DIは学術職とも言われており、文献検索と情報収集や情報の管理、臨床試験で確認された副作用などの情報をまとめる資料の作成などがあります。
医薬品に関する新しい情報について、医療従事者からの問い合わせに回答する場合もあります。
基本的にはデスクワークが多いとされます。
薬剤師が企業で働くメリット・デメリット
年収が高い以外にもスキルアップや福利厚生の充実など、製薬企業で働くことにより得られるメリットは多くあります。
しかしメリットだけではなく、もちろんデメリットもあります。
メリット
スキルアップが可能
企業薬剤師には基本的に調剤業務はありません。
その代わり学会や論文に接することが多く、英語力や最新の医薬品知識や学術的知識を磨くことができます。
MRは臨床現場の生の声を聞く機会が多く、コミュニケーション能力の向上にも役立ちます。
大手の製薬企業では自己啓発プログラムが受けられる場合もあり、努力次第で個人としての成長も得られます。
年収アップが望める
病院やドラッグストアから製薬企業に転職する場合、収入が上がる可能性が高いです。
前述のとおり、大手製薬企業の平均年収は他の業種を大きく上回っています。
中堅の製薬企業でも、薬剤師が携わる業務は比較的高収入となっていることが多いです。
収入の高さはやはり大きなメリットではないでしょうか。
併せて企業の将来性や安定性にも魅力があります。
福利厚生が充実している
産前産後サポートや子育てサポートが充実しており、その他社宅や住宅手当などもあり、休暇の種別も多数あります。
企業によっては社員食堂、レジャー施設の割引制度などの福利厚生もあります。
働き方改革が浸透してきましたが、製薬企業は改革を実施できるだけの体力を持っていることが多く、従業員のワークライフバランスに応じた柔軟な働き方を目指しています。
デメリット
仕事が忙しい
仕事が忙しいのは企業薬剤師に限った話ではありませんが、企業は病院や調剤薬局よりも利益を追求する側面が強く激務になりやすいです。
特に営業職であるMRは出張も多いです。
実際に製薬会社で激務を経験した方の体験談もあります。
倍率が高い
前述の通り、製薬企業は高年収で福利厚生が充実しており薬剤師に人気の高い就職先です。
必然的に求人の倍率が高くなるため、転職難易度が高いことがデメリットです。
製薬企業での勤務は未経験だと採用されにくいのはもちろんですが、経験者でも製薬企業に採用されるのは容易ではありません。
出張や転勤がある
病院や調剤薬局であれば出張や転勤があることは少ないですが、製薬企業に勤める薬剤師は出張や転勤があることが多いです。
特にMRは2~3年程度で勤務先が変わってしまうことも珍しくありません。
研究職や開発職の場合、定期的に学会や研修に参加することになるので移動や出張が多いのも特徴です。
遠出が苦手な方や結婚や出産などの大きなライフイベントを控えている方は、製薬企業への転勤は慎重に考えることをおすすめします。
企業薬剤師になる以外で薬剤師が年収1000万を狙う方法
大手製薬企業の平均年収は1,000万円を超えていることが多いですが、製薬企業で働く以外にも薬剤師が年収1,000万円を狙う方法は存在します。
1,000万円を超えることはできなくても、年収を上げる方法は知っておいて損はありません。
現職で昇給を狙う
王道ですが現在の職場で昇給・昇格を狙うのが最もリスクが少ない年収アップの方法です。
調剤薬局やドラッグストアなら管理薬剤師やエリアマネージャー、病院なら副部長や部長になることで年収が上がる可能性が高いです。
この方法では年収1,000万円を超えることは難しいですが、一般的に高収入とされる年収600~800万円くらいまでは可能です。
資格を取得する
資格を取得して年収を上げる方法もあります。
現職で手当が付く、転職の際に選択肢が広まるというメリットがあります。
代表例として認定薬剤師の資格がありますが、かかりつけ薬剤師となるには必須です。
認定薬剤師とは、本会認定薬剤師認定審査に合格し、特定の専門分野における薬物療法等についての十分な知識と技術を用いて、各医療機関において質の高い業務をしていることが認められた者をいう。
引用元:クローズアップ 認定・専門薬剤師-活躍する薬のエキスパート-
かかりつけ薬剤師になると手当が付き年収が上がる可能性が高まります。
その他、代表的な資格としては専門薬剤師があります。
専門薬剤師とは、本会専門薬剤師認定審査に合格し、特定の専門分野における薬物療法等についての十分な知識を用いて、各医療機関において質の高い業務を実践するとともに、他の薬剤師に対する指導的役割を果たし、研究活動等についても行うことができる能力を有することが認められた者をいう。
引用元:クローズアップ 認定・専門薬剤師-活躍する薬のエキスパート-
専門薬剤師になるには、まず認定薬剤師の資格を持っている必要があります。
習得難易度が大変高く、専門薬剤師になった場合も別途手当が支給されることが多いです。
認定薬剤師・専門薬剤師は共に下記の5つの専門性が必要とされる領域で活躍しています。
専門薬剤師が活躍する領域
- がん
- 感染制御
- 精神科
- 妊婦・授乳婦
- HIV感染症
転職する
リスクはありますが、年収1,000万円を目指すなら転職が最も効率の良い方法です。
求人数は少ないですが製薬企業でなくても年収1,000万円を超える仕事は存在するので、年収1,000万円超えの求人が出ていないかこまめにチェックするのがおすすめです。
薬剤師の年収は職場や地域により大きく変わるため、今の職場ではどれだけ実績を出しても年収1,000万円を超えることは難しい…ということが少なくありません。
昇給を目指すより転職した方が早いことが多いです。
薬剤師が企業に転職する際のポイント
前述の通り製薬企業の求人は人気のため倍率が高く、企業への転職は容易ではありません。
転職を成功させるには企業にとってメリットの高い人材になる必要がありますが、そのためには具体的に何をすれば良いのか解説します。
自分のスキルや経験・資格に合わせて企業を選ぶ
製薬企業で働くなら薬剤師の資格と医薬品への知識さえあればいいわけではなく、薬剤師以外の資格やスキルが求められます。
管理薬剤師であればマネジメント力や制度への知識、MRやCRCなら高いコミュニケーション能力が必要です。
品質部門では分析や統計の意味を理解し実践することが求められます。
薬品に関する論文は英語で出されることが多いので、英語をはじめとする外国語能力も求められます。外資系の製薬企業であれば必須レベルです。
情報収集をしっかり行う
製薬企業に限らず、転職を成功させるためには情報収集を念入りに行うことが重要です。
転職に情報収集が大事なんて当たり前のことでは?
と思うかもしれませんが、あまり情報収集をせずになんとなく転職活動をしてしまっている人が意外と多いのです。
しっかり情報収集をすることでそういった人たちに差をつけて、求職者の中で一歩抜きん出た存在になることができます。
情報収集を怠ってなんとなく良さそうな企業に転職したら募集要項と全然違った、転職アドバイザーのごり押しで希望とまったく違う企業に転職してしまった…等の失敗に陥ることがあります。
企業のホームページや募集要項を見ることはもちろん必須ですが、実際に企業で働いていた人から話を聞いたり、複数の転職アドバイザーに相談してみるのもおすすめです。
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薬剤師としてのキャリアをある程度積んでから転職する
製薬企業の業務はいずれも専門性が高く、医薬品や医療に関する知識が豊富に越したことはありません。
ただ闇雲に企業の求人に応募するだけでは採用されることは難しいです。
管理薬剤師として勤務した経験や認定薬剤師の資格があったり英語が得意なら、それは明確な強みになります。
特にこれといった強みがない、採用することで企業にどんなメリットがあるのか答えられないようであればある程度キャリアを積んでから転職することをおすすめします。
薬剤師特化型の転職アドバイザーを利用する
職種を問わない転職アドバイザーも存在しますが、薬剤師の転職なら薬剤師特化型の転職アドバイザーを利用するのがおすすめです。
薬剤師に特化している方が業界の現状について詳しい可能性が高いからです。
求人は企業の募集要項や求人サイトで公開しているものが全てではなく、非公開求人というものが存在します。
非公開求人は転職アドバイザーを利用することで見ることができます。
製薬企業の求人は稀少なため、転職アドバイザーに「製薬企業に転職したい」と相談して非公開求人も合わせてチェックした方が効率よく求人が見つかります。
一般的に非公開求人は好条件のものが多いので、「製薬企業に転職したい」という目的が明確なのであれば目を通しておいて損はありません。
おすすめの転職エージェントはセルワーク薬剤師
薬剤師に特化した転職エージェントの中でも特におすすめなのが、ジョブドア薬剤師の姉妹サイトであるセルワーク薬剤師です。
セルワーク薬剤師では利益重視で希望しない条件の求人をごり押しすることなく、あくまで薬剤師の方の希望を重視した提案を心がけています。
土日や平日夜間の面談にも対応しているので、有給や希望休が取りにくい方も相談しやすくなっています。
また入社後のアフターフォローもあり、万が一入社後に聞いていた話と違う…ということがあれば、アドバイザーが代わりに就業先に伝えることも可能です。
まとめ
- 製薬企業の年収は他の業種よりも高く、大手は平均年収が1,000万円を超えることも多い。
- 企業薬剤師は他の業種よりもより専門的な知識やスキルが求められる。
- 製薬企業へ転職するならしっかり情報収集を行うことがカギ。
製薬企業は他の業種よりも年収が高く、福利厚生も充実していて人気が高いです。
求人の倍率は高く転職の難易度は高いですが、その分リターンも大きいので挑戦してみてはいかがでしょうか。
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