医薬品全般に関する幅広い知識を有する薬剤師は、国家試験に合格した人だけがなれる専門職です。一見すると、高収入で安定した権威のある職業のようにも思えますが、収入についてネガティブな意見を持っている人たちもいるようです。
実際のところ、薬剤師の給与は低いのでしょうか？
この記事では、薬剤師の年収が低すぎると言われる理由４選を解説しています。また、働いている時に「割りに合わない！」と思ったときに、取るべき行動についても紹介しているので、薬剤師として働いている人たちは参考にしてみてください。
なお、薬剤師の転職を検討している人は以下のサービス比較表を参照してみてください。
薬剤師の年収が低すぎると言われる理由４選
さて、そもそも薬剤師の年収が低すぎると言われるのは、どうしてなのでしょうか？
ここでは、その理由を４つの視点から説明していきます。
教育にかけた投資に見合わない
まず、薬剤師になるための教育にかけた投資に対して給与が見合わないことから、年収が低すぎると評価する人たちがいます。
一般的な四年制大学と比べて、薬剤師を養成する薬学部は６年間通わなければいけないことに加えて、授業料に「実務実習費」が加算されることがほとんどです。そのため、私立大学に通った場合、６年間で1000万円以上の教育コストがかかります。
それにもかかわらず、「令和4年賃金構造基本統計調査」を見ると、薬剤師の平均年収は583.4万円で、医師が取得する平均年収1,428万円の半分以下です。さらに、看護師の平均年収508.1万円と比較して100万円以下の差額しかないため、教育にかけた投資に見合った給与がもらえないという印象を持つ人たちがいるのです。
参考文献： 令和4年賃金構造基本統計調査
病院薬剤師として働いている
次に、病院薬剤師は医師や看護師と比べて人件費削減の対象となりやすいことから給与が低いと感じる人たちがいます。
昨今、医師や看護師の人材不足が問題視されるなかで、やりがいがある、かつ安定して働ける病院勤務の薬剤師は新卒にも人気が高く、人手が足りている傾向があります。
そのため、経営の観点から、病院薬剤師の給与を圧縮してでも、医師や看護師の人件費を上げて採用を進めるところが多いのです。薬剤師もまた国家資格を有した権威ある専門職であるにもかかわらず、給与面での待遇があからさまに異なれば、不満が出るのは当然です。
しかし、人材の需要と供給から見たときに、どうしても病院薬剤師は不利になりがちなため、納得のいかない給与水準のまま働き続けている人たちが多いという実情があるのです。
地域によって賃金の格差が激しい
さらに、薬剤師として働く地域によって賃金の格差が激しいことから、給与が低すぎるという意見が出てくると考えられます。
「賃金構造基本統計調査 / 令和４年賃金構造基本統計調査 / 一般労働者 / 都道府県別」を参照して、2023年度における47都道府県で薬剤師が取得する平均収入の差額を見ると、１位の宮城県が717.7万円であるのに対して、最下位の三重県は491.2万円と200万円以上の格差があります。
同じ仕事についても給与にこれだけの差があると、「どうして自分が勤務している場所だけこんなにも給与が低すぎるのか……」と不満を抱くのは当然です。
これに関しては、都道府県で可能な限り給与格差が生まれないように是正しなければ、特定の地域にだけ薬剤師が集まるといった問題が起きかねないので、早期の解決が必要になると言えるでしょう。
参考文献：賃金構造基本統計調査 / 令和４年賃金構造基本統計調査 / 一般労働者 / 都道府県別
給与が上がりづらい構造になっている
最後に、そもそも薬剤師の給与が上がりづらい構造になっていると言われています。
他の職業と比べて、薬剤師の20代から30代までの給与所得は高い傾向があります。けれども、役職それ自体が少ないことから、それ以降は鈍化しやすく、給与が増えづらいのです。
加えて、医療は公益性の高い仕事であることから、不動産やM&Aの営業みたくインセンティブを導入することもできません。そのため、トータルで見たときに給与が低いと感じる可能性があるわけです。
割りに合わないと感じたときはどうする？
それでは、薬剤師として働いているときに、給与が割りに合わないと感じたときは、具体的にどうすればよいのでしょうか？
結論から言えば、薬剤師として得る給与の水準を改善するには、転職する以外にありません。実のところ、薬剤師として働ける場所には、いくつかの選択肢があります。
ここでは、薬剤師が給与を上げるために有効な選択肢を２つ紹介します。
製薬会社に転職する
薬剤師の資格を活かして高い給与を得たいのであれば、製薬会社のMR（Medical Representative）や薬事に関わる仕事に転職することをおすすめします。
病院や調剤薬局と比べて、企業で働くと下手したら倍以上の収入を得られる場合があります。もちろん、語学やプロジェクトマネジメントなど求められる職能レベルも高いため、だれもが簡単に転職できるわけではありません。
けれども、将来的に得られる給与を上げていきたいのならば、製薬系の企業に挑戦するのが最も適切なアプローチと言えます。薬剤師以外のスキルも身に付くため、中長期的にキャリアに箔を付ける意味でも意識すべき選択肢であると言えます。
平均給与の高い都道府県に転職する
加えて、薬剤師として働く都道府県を変えるのも選択肢のひとつです。
先述のとおり、薬剤師の平均年収は働く地域によって大きく異なります。同じ仕事でも場所を変えるだけで待遇が変わるのは転職コストが低い改善策として検討すべきです。
もちろん、生活の拠点を変えることには一定のハードルが存在するのも事実です。しかし、給与に対していつまでも不満を持ち続けながら働くのは精神衛生的にも不健全と言わざるを得ません。
厳しい現実かもしれませんが、できるだけ若いうちに転職したほうがライフプランの設計も柔軟に考えられるでしょう。結婚や出産などの家族を持つようになると、どうしても移動するのは難しくなっていきます。
不満を現実的に解消する習慣を身につけておくことで環境への適応能力も高まります。実際、昨今では、薬剤師に特化した転職サービスが多数、存在します。すぐに転職しなかったとしても、一度試しに相談しておくことで好条件の職場を見つけられるかもしれません。
見切りをつけて転職しよう
みなさんは薬剤師になるまでにお金と時間を膨大にかけたはずです。だからこそ、それに見合った働き方を選ばないと、仕事へのモチベーションも下がって「何のために薬剤師になったのか？」という目的観を見失ってしまうでしょう。その結果、生活に余裕がなくなり、不満を抱えたまま働き続けることにもなりかねません。
もちろん、薬剤師として働く意欲は必ずしも金銭面に左右されるわけではありません。しかし、同じ仕事をするなら、よりよい条件を求めて、キャリアを見つめ直すのは健全かつ賢明な選択と言えます。
むしろ、待遇の悪い環境になれていくと、自分で環境を変える力が次第に失われていきます。手遅れになる前に、もう一度、プロのアドバイスを受けながら自分の働き方を今一度、見つめ直してみましょう。
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