セルフメディケーション税制とは?
セルフメディケーション税制とは、健康の維持増進および疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人が、OTC医薬品等を購入した際にその購入費用について所得控除を受けることができる制度です。
具体的には、対象となるOTC医薬品の1年間の購入費用が世帯合計で12,000円を超える時に、その超える金額(上限:88,000円)が控除対象となります。
また、対象となる「一定の取組を行う個人」とは、次の内容を一つ以上受け、健康管理に自ら取り組む人とされます。
- インフルエンザの予防接種
- 市町村が実施するがん検診
- 勤務先の定期健康診断
- 特定健康診査(メタボ検診) など
このセルフメディケーション税制は、高齢化社会が進み医療費が膨らむ中で、医療費削減を目的とし「医療費控除の特例」として2017年1月に始まりました。
当初は5年間の期間限定とされていましたが、2022年1月より、対象となるOTC医薬品の品目が拡大され、5年間延長となっています。
(https://www.nichiyaku.or.jp/activities/self-medication/index.html,https://www.nicho.co.jp/column/16274/
より抜粋・意訳)
そもそもセルフメディケーションとは
そもそも「セルフメディケーション」って何?と思う方もいらっしゃるかもしれません。
WHO(世界保健機関)では、セルフメディケーションは「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当すること」と定義されています。
具体的には、自分の体調になんらかの不調を感じたときに、それが軽度のものかどうかを判断し、軽度と判断した場合に、病院を受診するのではなく、市販の薬を購入するなどの対応をすることです。
風邪をひいたなと感じた際に市販のかぜ薬を買って飲んだり、おなかの調子が良くない時に市販の胃腸薬を買って飲んだりすることは、まさに「セルフメディケーション」です。
セルフメディケーションを行うためにすること
先ほどご紹介した通り、「セルフメディケーション」の定義は「自分自身の健康に責任を持つ」ことと、「軽度な不調は自分で手当する」ことです。
「自分自身の健康に責任を持つ」ためには、自分の健康状態に積極的に関わることが大切です。
まずは日常生活において、
- 十分な睡眠を取る
- バランスの良い食事をする
- 適度な運動をする
などの健康管理を心がけ、定期的に健康診断を受け、自分の身体のことを把握しましょう。
健康を維持することで、生活習慣病のリスク軽減、改善や重症化防止も期待できます。
「軽度な不調は自分で手当する」ためには、その体調変化に敏感になることが大切です。
病院に行かず、市販薬で対応しようという判断をするには、普段の自分の体調を把握していなければなりません。
体調変化に早く気づくことが、セルフメディケーションのポイントとも言えます。
薬剤師によるセルフメディケーションの補助
セルフメディケーションは自分の健康管理を自らするものとされていますが、薬剤師はそのサポートを行うことができます。
市販薬を購入しようとした際、どの薬を選べばよいのかと迷うことは少なくないでしょう。
例えば「風邪薬」を選ぶ場合でも、のどが痛むのか、鼻水が気になるのかで選択すべき薬は異なります。薬剤師はその方の現在の症状を聞き取り、体調に合った薬を選択することが可能です。
また、薬の中には他の薬との飲み合わせによって効果が強く出すぎたり、弱まってしまったりという組み合わせがあります。もともと何か薬を服用している方は特に、その薬との併用することが問題ないかを薬のプロである薬剤師に判断してもらった方が安心です。
もともとかかりつけ薬剤師が決まっている方は、かかりつけ薬剤師を頼ることがおすすめです。
現在の服用薬はもちろん、アレルギー歴や体質をより理解しているかかりつけ薬剤師であれば、よりその人に合ったアドバイスが可能でしょう。
セルフメディケーション税制の対象となる人
セルフメディケーション税制の対象となるのは、対象のOTC医薬品を世帯合計で年間12,000円を超えて購入した人です。
また、対象となる人にはがん検診や定期健診などを受診していることも求められます。
医療費に関する税金の控除制度としては「医療費控除」が有名です。
医療費控除は1年間に自己負担した医療費の合計が10万円を超える場合に対象となります。
ここでの「医療費」には、診療代金の自己負担分の他、通院のための交通費・自ら購入した市販のOTC医薬品の費用なども含まれますが、10万円という高い金額のため、定期通院などがない人は対象となりにくいです。
セルフメディケーション税制は、この医療費控除の特例であり、通常の医療費控除が受けられない場合でも、対象となり得ます。
例えば、医療費が8万円の場合、医療費控除の対象にはなりません。
しかし、この8万円にセルフメディケーション税制対象のOTC医薬品の購入費用が3万円含まれる場合、この3万円は12,000円を超えているため、セルフメディケーション税制の対象となります。
セルフメディケーション税制は対象となる金額が低く設定されているため、定期的に薬を使用するという人でなくても対象となるケースが少なくありません。
また、医療費が10万円を超え、その中にセルフメディケーション税制対象のOTC医薬品の購入費用が12,000円を超えて含まれる場合、医療費控除とセルフメディケーション税制のどちらも対象となります。
セルフメディケーション税制の対象となる医薬品
セルフメディケーション税制の対象となる医薬品は、薬局やドラッグストアで購入できるOTC医薬品の一部です。
この対象医薬品は、厚生労働省が定めた特定の成分・薬効のOTC医薬品であり、令和5年3月時点で、成分名ごとの品目数で見て、2,696品目となっています。
制度の始まった2017年には、医療用医薬品で使われている薬効成分が含まれるOTC医薬品(いわゆるスイッチOTC医薬品)のみが対象でした。
2022年1月より、次の3つに対するOTC医薬品が追加対象となっています。
- かぜの諸症状
- アレルギーの諸症状
- 腰痛・関節痛・肩こり
この追加されたOTC医薬品は、様々な方が使用する機会の多い薬であり、よりセルフメディケーション税制の制度を使いやすくなったと言えます。
また、セルフメディケーション税制の対象医薬品には商品パッケージに「識別マーク」が掲載されています。
さらに、購入した際のレシートにも星印のマークがついているので、このレシート(領収書)は制度利用の申告を行う際にも必要となるので、忘れずに保管することが必要になります。
セルフメディケーション税制での減税額のシミュレーション
ここで、セルフメディケーション税制の適用を受ける場合の減税額をシミュレーションしてみましょう。
セルフメディケーション税制の対象となるOTC医薬品の購入金額が世帯合計で年間3万円とすると、12,000円を超える部分の18,000円が控除の対象金額です。
控除される税金は、所得税・住民税ですが、この税率はその人の所得によって変わります。
ここでは、所得税の税率が20%、住民税の税率が10%の場合でシミュレーションしてみます。
所得税:(3万円-12,000円)×所得税率20%=3,600円
住民税:(3万円-12,000円)×住民税率10%=1,800円
3,600円+1,800円=5,400円
この5,400円が合計の減税額となります。所得税の減税分は還付される形となりますが、住民税は翌年度の住民税負担額が減額になる形で減税されます。
セルフメディケーション税制の申告方法
セルフメディケーション税制の適用を受けるためには、確定申告が必要です。
確定申告は例年2月16日〜3月15日が受付期間です。
スケジュールの例として、2023年の1月〜12月に対象のOTC医薬品の合計購入金額が12,000円を超えた場合、2024年2〜3月の期間内に確定申告を行うことで、所得税の一部が還付され、2024年度の住民税が減税となります。
まとめ
- セルフメディケーション税制は国の財政を圧迫する医療費を抑制するためセルフメディケーションを推進することを目的として作られた制度
- セルフメディケーションを適切に行うためには、病院を受診する程でない段階で自分の不調を敏感に感じ取る必要がある
- 軽度な段階で適切なOTC医薬品を選択すれば、病院を受診することなく、回復に至ることも可能で、適用を受けるのに必要な検診受診などの取り組みは、大きな病気の早期発見にも繋がる
- セルフメディケーションにおいては、適切なOTC医薬品の選択が非常に重要であり、薬剤師のサポートを受けることも有効
- セルフメディケーション税制の適用を受ける際には、確定申告が必要であり、対象のOTC医薬品を購入した際のレシート(領収書)は保管しておく必要があります。
- 対象のOTC医薬品の購入額は、家族単位で合算できるため、一般家庭においても制度の対象
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